住宅とオフィスの設計・施工をさせていただきました。敷地は分譲地の南側と西側に接道した角地に位置し、既に立派な庭園が設えてあったため、その庭園との関係性を考慮しながら配置計画を行いました。和と洋の要素をバランスよく取り入れ、どっしりとした佇まいの建物を目指しています。

また、寒暖差の激しい山形の気候に対応し、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる住まいを実現するため、建物外周部にさらに断熱層を加える「付加断熱工法」を採用しました。省エネ性の高い設備機器の導入と合わせて、一次消費エネルギーを大幅に削減し、国が定めるZEH基準を上回る性能を確保しています。

一方で、断熱性能を高めるために壁が厚くなることで、意匠面では細心の注意が必要でした。特に、日本の伝統技法である真壁造りや障子といった窓まわりの納まりに影響が生じ、従来の和室のつくり方では対応が難しくなります。今回は、熟練の大工職人と何度も議論を重ね、CGによる内観検討を行いながら、仕上がりのイメージを共有し、断熱性能を損なうことなく、雰囲気ある和室を実現することができました。

脱炭素社会への取り組みが加速し、法整備が進む中で、より簡単で合理的な新しい工法も次々と登場しています。その一方で、日本の伝統的な意匠や工法に価値を見出し、採用するケースも大切にしたいと考えています。こうした意匠性と性能の両立には、設計者や現場で施工する職人の技術力や応用力が欠かせません。今回のプロジェクトを通じて、非常に良い経験をさせていただきました。